読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

絵本作家の横顔:ジョン・バーニンガム(John Burningham)

絵本作家 イギリス ジョン・バーニンガム

概略

ジョン・バーニンガム(John Burningham。1936~)は、イギリス出身の絵本作家、イラストレーターです。『ボルカ』と『ガンピーさんのふなあそび』でケイト・グリーナウェイ賞を、『ねえ、どれがいい?』でドイツ児童文学賞を、『いっしょにきしゃにのせてって!』と『いつもちこくのおとこのこ ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー』で米ペアレンツ・チョイス賞を、『おじいちゃん』でエミール/クルト・マッシュラー賞を獲得しています。また、イアン・フレミング作『チキチキバンバン』にイラストを提供しています。他にも多数の作品があります。私生活では絵本作家のヘレン・オクセンバリーと結婚し、三人の子ども(ルーシー、ウィリアム、エミリー)に恵まれました。


幼少期/少年期

ジョン・バーニンガムは、イギリスのサリー州ファーンハム(farnham。ファーナムとも)で、バーニンガム夫妻の第三子として、1936年4月27日に誕生しました(姉が二人います。エルスペスとマーガレット)。父はチャールズ・バーニンガム、母はジェシカ・バーニンガム(旧姓マッキントッシュ)です。母方の祖父は、ウェールズの海岸沿いにあるプレスタティンを教会区とする、メソジスト派の牧師でした。その祖父の兄は、お菓子会社マッキントッシュ・トフィーの創業者です。

f:id:ookami_to_taiyou:20170320222613j:plain
トレイラーハウスの前で母に抱かれるジョン・バーニンガム(『わたしの絵本、わたしの人生』より)

第一次世界大戦では出征し、勲章ももらった父チャールズでしたが、第二次世界大戦時には、良心的兵役拒否者となり、失業してしまいます。父親の職探しのため、一家はトレイラーハウスで、各地を転々とする生活を余儀なくされます。それにともないジョン・バーニンガムは、9つの学校に在籍することになりますが、その多くは寄宿学校でした。スコットランドの学校に通ったこともあります。田舎で暮らしていた頃には、ハチの巣に青酸カリの粒を投げて遊んだりしました。

f:id:ookami_to_taiyou:20170320222632j:plain
中央がジョン・バーニンガムで、両脇にはサマーヒルの学友(左がトニー、右がフランソワーズ)

13歳のとき、アレクサンダー・サザーランド・ニイルが創設したサマーヒル校(最も古いフリースクールとされ、「世界で一番自由な学校」とも呼ばれます)に転校します。中等教育を終えるまで、この学校には在籍することになります。当時のジョン・バーニンガムの写真を見ると、煙草らしきものを吸っていたようです。また、盗んだカギを使って、夜な夜な学校の食料貯蔵庫に忍び込んでは、フルーツ缶詰やミルクを胃におさめていました。こんな調子でしたが、中等教育修了試験には見事合格します(英文学のみ。それ以外の科目はすべて不合格でした)。

青年期

学校卒業後、ブリストルに赴き、兵役免除審査を受けます。審査にパスした後は、兵役免除者として、さまざまな活動に各地で携わりました。サセックスの森林管理公社で木を切り倒し、ハンプシャーでは農場(当時はまだ珍しかった有機農法の)で働き、ロンドンの国立精神病院で患者の搬送係をしたかと思えば、平和のための国際奉仕団に加わって、グラスゴーのゴーバンでスラム街の整備、イタリア南部カラブリア州の未開発地域で学校建設の手伝い、廃墟となったイスラエルの村での地ならし等など。トータルおよそ2年3か月の期間でした。

奉仕活動を終えた後、セントラル・スクール・オブ・アート(1989年にSaint Martin's School of Artと合併)のグラフィックデザイン/イラスト専門コースに進学、1959年に卒業します。持参したポートフォリオが認められ、基礎コースが免除されたため、この学校に通った期間は3年でした。講師には画家のキース・ボーン、舞台デザイナーのバーナード・ネビル、画家でイラストレーターのローレンス・スカーフがいました。後に妻となるヘレン・オクセンバリー(Helen Oxenbury。彼女も絵本作家になります)と出会ったのも、この学校でした。ヘレンは舞台美術を学んでいました。

f:id:ookami_to_taiyou:20170320222702j:plain
ランブレッタに乗るジョン・バーニンガムとヘレン・オクセンバリー(『わたしの絵本、わたしの人生』より)

在学中、雑誌『ギニー・ピッグ(Guinea Pig)』にイラストが掲載され、これがデビュー作となります。デザインの学位を取得して卒業した後、ヘレン・オクセンバリーと何度かイスラエルを訪ねます(彼女はハビマー劇団で舞台美術の仕事をしていました)。現地ではランブレッタ(イタリア製の二人乗り用スクーター)で移動していました。テルアビブに滞在していた際、アニメーション映画『Joseph the Dreamer(動画参照)』を制作していたヨラム・グロスから、人形作りを依頼されます。トーマス・マンの『ヨゼフとその兄弟たち』を原作とした、人形アニメ用のものです。制作した人形は、群衆シーンのエキストラで使われました。


Joseph the Dreamer: Trailer

ロンドン交通局から依頼が入り、いくつものポスターを制作することになります。当時の住居は、パーシー通り32番地(ソーホー)の半地下でした。お湯は出ず、風呂場もなく、暖房設備もありませんでしたが、1940年代に「マラテスタ」というアナーキスト集団のアジトとして使われていた、由緒ある(?)物置がついていました。その物置には多くのガラクタがあったので、寒さに耐えられなくった時には、それを室内で焚火することで暖をとりました。また、住民の少ない地区であったため、どんちゃん騒ぎのパーティーをするのに、とてもよい環境でした。

絵本作家として

ロンドン交通局のために制作したポスターをポートフォリオに入れ、イラストレーターとしての仕事を求め、いくつもの出版社を訪ねます。「挿絵用のものではない」との言葉を何度もかけられ、それならばと、自身で物語をつくり、絵を添えて、ひとつの話にまとめました。一作目となる『ボルカ』の原形です。この話は、ジョナサン・ケープ社のトム・マシュラー(Tom Maschler。ブッカー賞の創設に携わった編集者)が気に入って、やがて出版されることになります。ジョナサン・ケープ社として、初めてのフルカラー、リトグラフ印刷の絵本でした。ジョン・バーニンガムにとっても、初の絵本でした。

1964年は、ジョン・バーニンガムにとって、転機の年だったと言えるでしょう。長年つきあったヘレン・オクセンバリーと結婚し、ハムステッドに引っ越し、『ボルカ』でケイト・グリーナウェイ賞を獲得し、イアン・フレミングの大ヒット作『チキ・チキ・バン・バン』に挿絵をつけることになります。他にも何冊かの絵本を出しました。この翌年には第一子となる娘ルーシーにも恵まれます。

ジュール・ヴェルヌの『80日間世界一周』が1972年に出版100周年を迎え、その記念絵本を作るための取材旅行に出かけます。1970年のことです。80日間の旅程を作品とほぼ同じルートでまわり、その際には日本にも寄りました。この年には『ガンピーさんのふなあそび』も出版され、翌年のケイト・グリーナウェイ賞に輝きます。ケイト・グリーナウェイ賞を二度獲得した、初めてのイラストレーターとなりました。

日本との関係

「EXPO'90 国際花と緑の博覧会」のためのストーリーを、JR西日本からの依頼で作ることになり、絵本『いっしょに きしゃに のせてって!(当時のタイトルは「おーい、おりてよ」)』として発表します。この時には、他にも二つの駅舎と、3両編成の鉄道客車のデザインも頼まれていました(さすがバブル期というものです)。博覧会が終わった後、駅舎は、小浜線の若狭本郷駅(会場では「風車の駅」)と、福知山線の柏原駅(会場では「山の駅」)に移設されました。客車は、京都梅小路蒸気機関車館(現在の京都鉄道博物館)で展示されることになります。

和歌山県で開催された「EXPO'99 南紀熊野体験博」のために、絵本を作ってほしいとの依頼を受け、『地球というすてきな星(Whadayamean?)』を上梓しました。取材のため実際に熊野周辺を訪ねています。

2008年、絵本作家としてデビュー45周年を記念した『ジョン・バーニンガム絵本原画展』が、日本各地を巡回しました。このとき、一部の会場ではサイン会が開かれました。ジョン・バーニンガムは72歳でした。自伝『わたしの絵本、わたしの人生』もほぼ同じ時期に出版されます。

わたしの絵本、わたしの人生―ジョン・バーニンガム

わたしの絵本、わたしの人生―ジョン・バーニンガム

ジョン・バーニンガム作品リスト(年代降順)

2010年代

2016 『ドライバー マイルズ』(Motor Miles)
2015 『John Burningham's Champagne』
2015 『シルヴィーどうぶつえんへいく』(The Way to the Zoo)
2014 『ピクニック』(Picnic)
2013 『つなひき』(Tug of War)
2010 『ひみつだから!』(It's a Secret!)
2010 『あかちゃんがやってくる』(There's Going to Be a Baby)ヘレン・オクセンバリーとの共著

2000年代

2007 『わたしの絵本、わたしの人生』(John Burnhingham Collection)
2006 『エドワルド せかいでいちばんおぞましいおとこのこ』(Edwardo the Horriblest Boy in the Whole Wide World)
2004 『When We Were Young: A Compendium of Childhood』
2003 『旅するベッド』(The Magic Bed)
2003 『バーニンガムのえいごえほん かず』(Numbers)
2003 『バーニンガムのえいごえほん いろ』(Colours)
2003 『バーニンガムのえいごえほん あるふぁべっと』(Letters)
2003 『バーニンガムのえいごえほん はんたいことば』(Opposites)
2002 『The Time of Your Life: Getting On With Getting On』
2000 『ねんころりん』(Husherbye)

1990年代

1999 『地球というすてきな星』(Whadayamean?)
1998 『France』
1996 『くものこどもたち』(Cloudland)
1994 『コートニー』(Courtney)
1993 『クリスマスのおくりもの』(Harvey Slumfenburger's Christmas Present)
1992 『England』
1991 『アルド わたしだけのひみつのともだち』(Aldo)

1980年代

1989 『A Grand Band』
1989 『A Good Job』
1989 『The Car Ride』
1989 『Animal Chatter』
1989 『いっしょにきしゃにのせてって!』(Oi! Get Off Our Train)ペアレンツ・チョイス賞
1987 『いつもちこくのおとこのこ ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー』(John Patrick Norman McHennessy: The Boy Who Was Always Late)ペアレンツ・チョイス賞
1986 『ジュリアスは どこ?』(Where's Julius?)
1985 『あそんでまなぼう① ジョン・バーニンガムの123』(John Burningham's 123)
1985 『あそんでまなぼう② ジョン・バーニンガムのabc』(John Burningham's abc)
1985 『あそんでまなぼう③ ジョン・バーニンガムのいろ』(John Burningham's Colors)
1985 『あそんでまなぼう④ ジョン・バーニンガムのはんたいことば』(John Burningham's Opposites)
1984 『こっこっこ めええ』(Cluck Baa)
1984 『がちゃがちゃ ぽろろん』(Jangle Twang)
1984 『とんで つまずく』(Skip Trip)
1984 『どしん ばたん』(Slam Bang)
1984 『くんくんあらら』(Sniff Shout)
1984 『よろよろぽん』(Wobble Pop)
1984 『おじいちゃん』(Granpa)Kurt Maschler Award Emil/ニューヨーク・タイムズ・ベスト絵本賞
1983 『Count Up』
1983 『Five Down』
1983 『Just Cats』
1983 『Pigs Plus』
1983 『Read One』
1983 『Ride Off』
1983 『川べにそよ風』(The Wind in the Willows)ケネス・グレアム作
1982 『アボカド・ベイビー』(Avocado Baby)
1980 『ショッピング・バスケット』(The Shopping Basket)

1970年代

1978 『もうおふろからあがったら、シャーリー』(Time to Get Out of the Bath, Shirley)
1978 『ねえ、どれがいい?』(Would You Rather...)ドイツ児童文学賞
1977 『なみにきをつけて、シャーリー』(Come Away from the Water, Shirley)
1975 『もうふ』(The Blanket)
1975 『とだな』(The Cupboard)
1975 『いぬ』(The Dog)
1975 『ともだち』(The Friend)
1974 『あかちゃん』(The Baby)
1974 『うさぎ』(The Rabbit)
1974 『がっこう』(The School)
1974 『ゆき』(The Snow)
1973 『ガンピーさんのドライブ』(Mr Gumpy's Motor Car)
1972 『Around the World in Eighty Days』
1970 『ガンピーさんのふなあそび』(Mr Gumpy's Outing)ケイト・グリーナウェイ賞/ニューヨーク・タイムズ年間ベスト絵本賞

1960年代

1969 『はるなつあきふゆ』(Seasons)
1967 『ハーキン 谷へおりたきつね』(Harquin: The Fox Who Went Down to the Valley)
1966 『ずどんと いっぱつ すていぬシンプ だいかつやく』(Cannonball Simp)
1965 『はたらくうまのハンバートとロンドン市長さんのはなし』(Humbert, Mister Firkin and the Lord Mayer of London)
1964 『John Burningham's ABC』
1964 『The Extraordinary Tug-of-War(レタ・シャッツ再話)』
1964 『バラライカねずみのトラブログ』(Trubloff: The Mouse Who Wanted to Play the Balalaika)
1964 『チキチキバンバン:まほうのくるま』(Chitty Chitty Bang Bang: The Complete Adventures of the Magical Car)イアン・フレミング作
1963 『ボルカ はねなしガチョウのぼうけん』(Borka: The Adventures of a Goose With No Feathers)ケイト・グリーナウェイ賞

※出版年はすべて原作。原題は丸カッコ内のもの。日本語タイトルがないものは未邦訳作品。

関連エントリ

ookami-to-taiyou.hatenablog.com
ookami-to-taiyou.hatenablog.com
ookami-to-taiyou.hatenablog.com