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『コートニー』ジョン・バーニンガム

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あらすじ

子どもたちの説得に屈した両親は、「血統書付きの犬なら」と、条件をつけて犬を飼うことを認めます。けれども、子どもたちが選んだのは、誰も欲しがらない老いた雑種でした。名前はコートニー。


インプレッション

人生の奥深さを垣間見る

とぼけた語り口と、ゆるいタッチの絵柄に騙されがちですが、完璧に計算され尽くした、最高にファンキーでカッコいい絵本です。間違いなく傑作です。しかし、一読して『コートニー』が傑作であることを見抜くのは難しいでしょう。むしろ、たくさんの疑問がアタマの中で渦を巻き、ちょっとした混乱に襲われるはずです。

「なぜ子どもたちは、わざわざ見向きもされない犬を選んだんだろう?」
「どうして両親は、コートニーの素晴らしさに、目を向けようとしないんだろう?」
「なぜ子どもたちは、コートニーの活躍を、両親に伝えないんだろう?」
「どうしてコートニーは、急に姿をくらましたんだろう?」
「なぜコートニーを、誰も思い出さないんだろう?」

『コートニー』を読み解くカギは、これら疑問の中にあります。ただし、絵本の中にアンサーはありません。読んでいる途中で浮かんでくる、いくつもの疑問の答えは、読み手が自分自身で探してくる必要があります。

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ぜひとも再読する前にじっくり考えてください。その答えを手にした瞬間、この絵本がとてつもない傑作であることに気づくはずです。「これぞ巨匠の仕事!」という、実にパーフェクトな作品であることに。場合によっては、感動すら覚えるでしょう。そのあまりにロジカルで明確なメッセージに驚いて。それでいて、あちこちで茶化すように、スルッとフェイントを入れてくるのも、チャーミングですし、ウマすぎてズルいですし、とにかく抜群のセンスです。

ご注意!

本作のコートニーが「雑種の名犬」であるように、絵本の『コートニー』も「雑種の傑作」です。血統書付きの犬のように、誰しもが認めるタイプの傑作ではありません。心して読まないと、「話としては楽しいけれど、どういうわけで傑作なんだろう???」と、戸惑うばかりでしょう。読み解くためのカギは、すでに示しましたが(思い浮かんだ疑問と向き合うことです)、分からない人には分からない可能性が高いです。その点、ご注意ください。

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一方で、ひとつの疑問が解けた瞬間、一気に物語のすべてが理解でき、軽く鳥肌が立つくらいの衝撃を受けることもまた記しておきます。ただ、決して意地悪するわけではありませんが、そのためのさらなるヒントは書きません。下手に説明してしまうと、極めてユニークでありつつ、デリケートな本作の素晴らしさを損ねかねないためです。『コートニー』のおもしろさは、自身で見つけてください。本当によくできた作品であることを実感できるはずです。

作品情報

『コートニー』(COURTNEY)
作者:ジョン・バーニンガム(John Burningham)
翻訳:谷川俊太郎
出版:ほるぷ出版
初版:1995年(日本語版)

コートニー

コートニー

COURTNEY-GLB

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