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『きょうはみんなでクマがりだ』マイケル・ローゼン再話/ヘレン・オクセンバリー画

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あらすじ

よく晴れた行楽日和、野山を散策するには絶好の一日です。『クマがり』の歌をうたいながら行けば、冒険心も弾みます。そう、本物のクマが出てくるまでは……。


インプレッション

クマったことはありますか?

五人と犬一匹でピクニックに出かけ、冒険気分を盛り上げるため、『クマ狩り』の歌を口ずさみながら、野山を分け行っていたら、まったく思いがけず本物のクマと遭遇してしまい、「うわああああ!」とパニックに陥る、実にシンプルな話です。文章にはリズム感があって、ストーリー展開のテンポもよく、また反復の楽しさもあります。ロングセラーにも納得です。

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もちろん、ただそれだけの絵本であるなら、このブログで紹介することもありません。確かに一読しただけでは、とりわけ何のフックもないように錯覚します。しかしラストで語られる決意と、その次のページ(背表紙サイドの見開き)のショットを見ると、「おや?」と引っかかりを覚えます。イラストを描いているのは、ヘレン・オクセンバリー。ジョン・バーニンガムのパートナーです。これはやはり何かありそうです。

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ちょっと考えたところ、思い当たるフシがありました。ときおり、こんなことを言う人がいます。「まずは日本でトップに立つ予定」、「これで世界を取るから」、「歴史に名を残すつもりだから」等といった、野望じみた発言をする人です(あなたの周りにもいるかもしれません)。本人には冗談で言っている様子はなく、それどころか本気も本気な感じです。

ただし、実際に有言実行できるケースは非常にまれで、ほとんどの場合は半年もしないうちに、「そんなこと言ってた?」と、ケロリとした顔で言ってのけます。ことさらトボけた雰囲気もないので、過去の発言は、ピクニックで『クマ狩り』の歌を口ずさむのと、似たような感覚なのでしょう。つまり、本物のクマを狩るつもりで『クマ狩り』を歌わないように、ただその場のテンションを上げるため、イキったことを吹いてみただけ、という。

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このように思いをめぐらせると、クマに遭遇したメンバーは、とてもラッキーです。命を落とさずにすんでもいるので、二重の意味でラッキーです。野心を口にした人たちが、やがて目標をあきらめたり、挑戦を放り出したり、自身の言葉自体を忘れたりしてしまうのは、不幸にも「クマ」に遭遇しなかったから、そのための努力をしなかったから、と考えられるためです。

少なくとも「クマ」に出くわしていたら、手ひどく打ちのめされた挫折感を持っていたり、あるいは反対に、かえって奮い立つはずだからです(レアケースとしては、「クマ」と仲良くなるパターンもあります)。それが本物との遭遇であり、どちらに転んでも貴重な財産となります。

いずれにせよ──、冒険のあとに入るベッドは、とても心やすらぐものです。それでは、おやすみなさい。

作品情報

『きょうはみんなでクマがりだ』(We're Going on a Bear Hunt)
作者:マイケル・ローゼン(Michael Rosen)
挿画:ヘレン・オクセンバリー(Helen Oxenbury)
翻訳:山口文生
出版:評論社
初版:1991年(日本語版)

きょうはみんなでクマがりだ (児童図書館・絵本の部屋)

きょうはみんなでクマがりだ (児童図書館・絵本の部屋)

We're Going on a Bear Hunt

We're Going on a Bear Hunt

『クマ狩り』の歌について

イギリス人の子どもなら、誰もが知っているとされる「We're Going on a Bear Hunt」。歌詞は「We're going on a bear hunt. We're going to catch a big one」で始まり、日本語では「今日はみんなでクマ狩りだ。つかまえるのはデカいやつ」と訳されています。実際に聴いてみたい場合、The Wigglesによるものが、普通にポップスとして親しみやすいです。


The Wiggles ~ We're Going On A Bear Hunt

作者のマイケル・ローゼンによる朗読動画もあわせて貼っておきます。朗読という一般的には地味なジャンルの動画なのに、この再生回数なので(現時点で380万オーバー)、根強い人気があるものと思われます(絵本の公式サイトも充実しています)。


Michael Rosen performs We're Going on a Bear Hunt