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『ドライバーマイルズ』ジョン・バーニンガム

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あらすじ

家で飼っている犬のマイルズは、とっても厄介もの。うるさく吠えるし、散歩も嫌い。呼んでも来ない。
そんなマイルズを見ていたお隣のハディさんが、犬用のマイカーを作ると……。


インプレッション

急に一体どうしたこと!?

脱力したイラストに、ゆるい語り口、それでいてカッコいい絵本に仕上げてくる、ジョン・バーニンガム(御年80歳)の手腕には、ひたすら脱帽です。ストーリーは、一貫してほのぼのしていて、「犬がクルマを運転するですって!?」という部分を除いては、特におかしな描写はありません(もっとも、絵本的なリアリティから考えれば、クルマを運転する犬の存在だって、それほどヘンな現象とは言えませんけれど)。

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さて、この手の絵本は、おかしなところから読み解くのが一番です。しかし、考えればすぐに分かるでしょう。たとえば、子どもをスキー教室に放り込んだら(あるいはダンススクールに入れたら、親戚の家に預けたら、もしくはサッカーを、ドラムを、水泳を習わせたら)、それまでは玄関に靴を脱ぎちらかし、泥だらけの手で冷蔵庫を開け、ダイニングテーブルに腰かけてテレビを見るような風だったのが、一転してビックリするほどスマートな立居振舞になった──。世にありふれていながら、それでいて親からすると、まさに怪奇現象としか思えない変化。

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なぜって、ふだんから口を酸っぱくして(時には怒りを交えて)、いくら注意しても改まらなかった悪癖が、子どもを教室に入れた瞬間、何も言わずとも、玄関で靴をそろえ、帰宅したら手を洗い、ソファに座ってテレビを見るようになったりするのですから。場合によっては、逆に親が、子どもから注意されたりする始末です(「外から戻ったら、うがいをしなくちゃダメでしょ!」等)。いったい何がなんだか分かりません。しかし、子どもに訪れたポジティブな変化(成長と言ってもいいでしょう)を、戸惑いつつも、うれしく思うはずです。

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……といったエピソードを、フィクションの手法によって、すっとぼけた調子で落とし込んで来るわけです。「さすが!」としか言いようがありません。一連の見開きページとか、もうホントに最高すぎます。子どもって、子どもだけの世界を生きることで、かえって勝手に成長するものです。他にも遊び心は溢れていて(愛情たっぷりの!)、それは本作を読んでのお楽しみとしておきましょうか。

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なお、007シリーズで知られるイアン・フレミングによる唯一の児童書は、『チキ・チキ・バン・バン』(1964年)で、当時この物語にイラストを添えたのは、若き日のジョン・バーニンガムでした。『チキ・チキ・バン・バン』のストーリーを知った上で、『ドライバー マイルズ』を読むと、作者バーニンガムの今昔が交錯し、より一層グッと来るものがあるでしょう。ヒントは、絵本に登場するハディさんの次回作です。

作品情報

『ドライバーマイルズ』(Motor Miles)
作者:ジョン・バーニンガム(John Burningham)
翻訳:谷川俊太郎
出版:BL出版
初版:2016年(日本語版)

ドライバー マイルズ

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Motor Miles

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