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『わたしのそばできいていて』リサ・パップ

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あらすじ

主人公のマディは、音読が苦手な女の子。授業で教科書を読まされると、いつも途中でつっかえてしまい、クラスメイトからクスクス笑われます。そんなマディが、ある日、お母さんと図書館を訪れると、白いふわふわの大型犬が待っていて……。


インプレッション

ただそばにいるだけの素敵な魔法

表紙のイラストが、物語のハイライトです。『わたしのそばできいていて』を紹介するのに、「このシーンを際立たせるため、前後にストーリーが用意されている」としても過言ではないくらいです。しかし何たることか、表紙のイラストは、作品中には登場しないのです。幻のハイライトを表紙に使うという、じつに罪な絵本です。

けれども反対に、ハイライトが作中に描かれないことが、いよいよ想像力を刺激し、この絵本を印象深いものにしています。一読すれば、どのような物語があったことで、表紙の情景が実現されていて、そしてその様子がどのようなものであるのかは、彼女たちの息遣いまで含めて、まさに手に取るようにイメージできるからです。そのため、読み終えてから改めて表紙を眺めると、非常に味わい深いものがあります。

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さて、物語の冒頭、彼女は力強く宣言します。
「わたしはマディ。字を よむのが だいっきらいな女の子」

全身から発せられる気迫と、そのたたずまいのあまりの説得力に、「なるほど、確かに。彼女は本当に字を読むのが嫌いなんだろう」と心から納得させられます。そこに疑問の余地はありません。なぜって……見ての通りの様子なのですから!

のっけからそうであるように、主人公のマディは、まったくストレートに、しかも全身全霊で感情をあらわにします。表情もクルクル変わります。存在として抜群にかわいらしいです。物語の展開とは別に、ただページをめくり、マディの表情を追うだけでも、純粋に楽しめてしまうほどです。それでいて同時に、このようなマディのキャラクターがあってこそ、物語のハイライトは、いっそう輝きを放ちます。

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マディの感情をうまくトレースすることができれば(つまり心底から無邪気に感情移入できたなら)、その振れ幅の大きさによって、静かで深い感動を味わうことができるでしょう。場合によっては大型犬を飼いたくなるかもしれません :-)

作品情報

『わたしのそばできいていて』(Madeline Finn and the Library Dog)
作者:リサ・パップ(Lisa Papp)
翻訳:菊田まりこ
出版:WAVE出版
初版:2016年(日本語版)

わたしのそばできいていて

わたしのそばできいていて

Madeline Finn and the Library Dog

Madeline Finn and the Library Dog

リサ・パップについて

リサ・パップ(Lisa Papp)は、米ペンシルバニア在住の絵本作家で、ご覧のように犬好きのようです(ただし本人が自宅で飼っているのはネコです)。日本語に訳されたものは、現在までのところ『わたしのそばできいていて(原題:Madeline Finn and the Library Dog)』だけのようですが、他にもいくつかの絵本を出しています。ちなみに『わたしの~』は、13ヶ国語に翻訳されています。

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夫ロバートとの共作『The Town that Fooled the British: A War of 1812 Story』では、2011年にNAPPA(National Parenting Publications Award)オナーを受賞しました。他の作品については著者サイトの「My Books」から確認できます。『わたしの~』を含めて、文章が入る前のイメージが多数公開されてもいます。

ライブラリ・ドッグ( Library Dog)について

原題を直訳すると「マデリン・フィンと図書館犬」となりますが(マデリンの愛称がマディになるわけですね)、実際にアメリカの一部の図書館では、このようなセラピードッグが活躍しているようです。

「犬に音読する」という風変わりなサービスが、一体どのような経緯で誕生して、そして広まったのかは分かりませんが、ひょっとすると冗談から生まれたのかもしれません。そう、犬のリード(Lead)をリーディングのリード(Read)にかけて……。