逆引きガイド:世界の絵本大賞リスト

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世界の絵本大賞リストについて

海外の絵本大賞は、大小さまざまあり、あまりに数が多すぎて混乱しがちです。メジャーなところを目的別に一覧にしてみました。おおまかな傾向や特徴でグルーピングしているため、そこまでの厳密性はありませんが、あたらしい絵本との出会いを求める際、何らかの一助になれば幸いです。


逆引きガイド:世界の絵本大賞

モダンで洗練された絵本を読みたい

ニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞

米ニューヨークタイムズ紙が、その年の絵本ベスト10を選出します。1952年から続く伝統あるこの企画「The New York Times Best Illustrated Children's Books of The Year」ですが、格式ばったところはなく、ポップで小洒落た作品が選ばれるように見受けられます。「Illustrated Children's Books」とあるように(絵本は通常「Picture Book」と書かれます)、どの絵本のイラストも、クオリティが高いです。大人でも楽しめる絵本を探している方は、こちらの賞をチェックしてみるといいでしょう。なお2009年には、日本人の作品も選ばれています(『ゆきがやんだら』酒井駒子)。

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ゴールデン・カイト賞

前年に出版された作品の中から、同業者(つまり絵本作家やイラストレーターや児童文学作家たち)が投票を行って、選出される賞です。クリエイターズ・クリエイターな側面がある賞、それがゴールデン・カイト賞(Golden Kite Award)と言えるでしょう。そのため作家たちにとっては、大変名誉ある賞です。絵本のカテゴリでは、テキスト部門とイラストレーション部門があります。運営はSCBWI(Society of Children's Book Writers and Illustrators)によって行われています。

フレッシュな感性で選ばれた絵本を読みたい

シビルズ賞(サイビルズ賞)

「今までの児童文学賞は、ちょっとカタすぎるのでは?」という思いから発足したのが、このシビルズ賞(Cybils Award)です。パネリストはボランティアのブロガーで、手作り感ある運営がされています。いささかユルい雰囲気ですが、選出される作品は、まちがいなく一級品です。ネット時代のユニークな賞と言えるかもしれません。いくつものカテゴリが幅広く用意されており、絵本は「Fiction Picture Books」に分類されています。

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シャーロット・ゾロトウ賞

ウィスコンシン大学マディソン校の教育学部にあるCCBC(Cooperative Children's Book Center)が運営している児童文学賞、それがシャーロット・ゾロトウ賞(Charlotte Zolotow Award)です。子どもたちと接する機会が多い(であろう)教育学部の大学生たちが関与しているため、現場の新鮮なフィードバックから、時代に即した作品が選ばれる傾向があるように見受けられます。なお、賞に名前が冠されているシャーロット・ゾロトウ(1915~2013)は、かつてウィスコンシン大学で学んだ絵本作家、イラストレーターです。

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話題の絵本を読みたい

コールデコット賞

海外における絵本の賞といえば、コールデコット賞(Caldecott Medal)が最もよく知られ、数多くの作品が日本でも出版されています。アメリカの賞ですが、世界的に有名です。選ばれる作品のクオリティから、ポジション的には絵本界の「ノイシュタット国際文学賞」、あるいは「フォークナー賞」といった辺りになるかもしれません。近年の話題作をチェックしたい場合、まずはコールデコット受賞作を積極的に読むといいでしょう。翻訳された作品も手に入れやすいです。

ケイト・グリーナウェイ賞

米コールデコット賞と双璧をなすのが、この英ケイト・グリーナウェイ賞(Kate Greenaway Medal)です。こちらもやはり世界的に有名で、たとえるなら絵本界の「ブッカー賞」といったところでしょうか。過去一年の間にイギリスで出版された、すぐれた絵本が受賞対象作となります。日本語に訳された作品も多いので、コールデコット受賞作とあわせて、ケイト・グリーナウェイ受賞作を読めば、ロングセラーから最近の話題作まで、手軽におさえることができるでしょう。

ボストングローブ・ホーンブック賞

アメリカで最大部数を誇る日刊紙「ボストン・グローブ(The Boston Globe)」と、アメリカ最古の児童雑誌「ホーン・ブック・マガジン(Horn Book Magazine)」が共同で運営しているのが、このボストングローブ・ホーンブック賞(Boston Globe-Horn Book Awards)です。どちらもボストンに本社があります。ボストングローブ・ホーンブック受賞作は、コールデコット賞やケイト・グリーナウェイ賞を受賞していることが多いので、「コールデコット賞とグリーナウェイ賞の受賞作品は、だいたい読んだかな?」といった段階で、チェックするといいかもしれません。

あたらしい絵本作家に出会いたい

エズラ・ジャック・キーツ賞

1986年から賞の授与が始まったエズラ・ジャック・キーツ賞(Ezra Jack Keats Book Award)は、絵本作家にとっての世界的な登竜門と言えるでしょう。最近であれば、今をときめくクリス・ホートン(Chris Haughton)、クリスチャン・ロビンソン(Christian Robinson)といったイラストレーターが受賞しています。新しい才能との出会いを求めるなら、この賞をチェックしてみるといいかもしれません。なお1989年には、日本人の作品も選ばれています(『いもうとのにゅういん』筒井頼子)。

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子どもと絵本を楽しみたい

ドクター・スース賞(セオドア・スース・ガイゼル賞)

児童文学の発展に多大な貢献したとして、ピューリッツァー賞特別賞を受賞したドクター・スース(本名:セオドア・スース・ガイゼル。1904~1991)の名を冠した賞、それがセオドア・スース・ガイゼル賞(Theodor Seuss Geisel Award)です。子どもが読んで、心から楽しいと思える絵本作りを心がけたドクター・スース。そんな彼のスタンスを継ぐかのように、この賞の受賞作には、やさしさと楽しさが溢れているように感じられます。

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ペアレンツ・チョイス賞

実に多岐にわたるカテゴリを持つ、米ペアレンツ・チョイス賞(Parents' Choice Awards)。絵本はもとより、おもちゃ、ゲーム、テレビ番組、オーディオ、Webサイトまで、ありとあらゆるグッズ、メディアを対象に、「これは教育的にGOOD!」と太鼓判を押しまくる、いかにもパワフルでアメリカンな団体ペアレンツ・チョイス。レビューも熱いです。年齢や価格でソートできますが、過去の受賞作を見つけにくいのが玉に瑕といったところ。

ドイツ児童文学賞

ドイツで唯一、国営の文学賞である、ドイツ児童文学賞(Deutsche Jugendliteraturpreis)は、ドイツ家族・高齢者・婦人・青少年省によって1956年に設立されました。部門は絵本、児童書、ヤングアダルト、ノンフィクションの4つがあります。まさしくドイツ的な生真面目さによって、受賞作は国際的に選ばれます。米ペアレンツ・チョイス賞と同様、やや教育的なニュアンスが濃いですが、アプローチはおよそ正反対といった部分が、それぞれのお国柄をあらわしているかのようです。

力強い物語を読みたい

コレッタ・スコット・キング賞

1968年にキング牧師が暗殺された翌々年、コレッタ・スコット・キング賞(Coretta Scott King Award)が、アメリカ図書館協会(ALA: American Library Association)によってスタートします。おそらく当初は、多分に政治的な理由で設立されたのでしょうが、選出されるアフリカ系アメリカ人による優れた作品は、他の絵本賞には希薄な、力強いものが多いように見受けられます。やや受賞者に常連化が見られます。なお、賞に名前が入っているコレッタ・スコット・キングは、キング牧師の妻です。

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古典を読みたい

国際アンデルセン賞

誰もが認める絵本界の「ノーベル文学賞」、それが国際アンデルセン賞(Hans Christian Andersen Award)です。文学的、美術的な側面の色濃い賞です。賞に含まれるアンデルセンの名は、もちろんハンス・クリスチャン・アンデルセンに由来しています。隔年で実施され、作家の全業績を対象として、国際児童図書評議会 (IBBY)から授与されるものです。日本人では過去に、赤羽末吉(1980)、安野光雅(1984)、まど・みちお(1994)、上橋菜穂子(2014)の各氏が受賞しています。

フェニックス絵本賞

フェニックス絵本賞(Phoenix Picture Book Award)は、20年前に出版され、現在なお高い評価を得ているにもかかわらず、当時において賞を授与されなかった作品に対して贈られる、とてもユニークなものです。フェニックス(不死鳥)の名の通り、作品の再評価という側面が強くあります。以前より児童書を対象にしたフェニックス賞(Phoenix Award)は存在していましたが、2013年から絵本に限定したフェニックス絵本賞が新たに設けられました。

エミール/クルト・マッシュラー賞

今はもう消えてしまった児童文学賞が、エミール/クルト・マッシュラー賞(The Kurt Maschler Award)です。1982年から1999年まで実施されていました。賞の創設者は、クルト・マッシュラーです。そして彼の息子トム・マシュラーこそ、あの「ブッカー賞」をイギリスで立ち上げた人物で、実に親子二代にわたって、意欲的な賞の創設にたずさわっています。なお、クルト・マッシュラー賞は、別名エミール(Emil)とも呼ばれてきました。これは『エーミールと探偵たち』の像が、副賞として贈られていたことによります。

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