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『わたしのいえ』カーソン・エリス

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あらすじ

いろんな家と、その暮らし。豪華な宮殿から、素朴な石造りの家まで。崖の上から、海の底まで。現実の家から、空想の家まで。


インプレッション

そこには誰かが住んでいる(住んでいた)

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さまざまな家が、ページごとに紹介されます。そこの住民が描かれている場合もありますが、家の外観だけがポツンと置かれていることもあります。これといった仕掛けもなく、ドラマチックな展開もありません。主人公らしき語り手も、ほぼほぼ姿を見せません。ふつうに考えて、この絵本を読んでいて、胸にグッと来たり、ホロリとさせられることは、ないはずです。しかし、おかしなことに、妙にしんみりさせられます。不思議です。ただただ淡々と、やさしいタッチで家が描かれているだけなのに。

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ページをめくっていると、思わされます。みんなそれぞれに帰る家があり、それぞれの暮らしがあって、それぞれの泣き笑いがあるのでしょう──。幸せな人もあれば、それほど幸せではない人もいるはずです。お金持ちもいれば、そんなにお金が余っていない人も。大勢で住んでいることもあれば、ひとりで住んでいることも。そして、眠くなったら眠りにつき、お腹がへったら食事にする。実に当たり前のことです。なのに何だか、いとおしい気持ちになってきます。ページから垣間見えるのは、それぞれの生活のごく一部で、別にどうってことないものなのに。

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おそらく家を通して、住んでいる人のファンタジーが読み取れてしまうからでしょう。生きていく上では、「起きて半畳、寝て一畳」あれば足りるわけです。ただし、その空間に対して、「どう暮らしたいのか」、「どのように生きたいのか」、「何をもって幸福な人生としたいのか」といった想いを込めた瞬間、サイズ、ロケーション、カラーリング、さまざまな家ができあがります。それは淡い夢のようにも思えます。やがて家は朽ちてしまいますし、人もいつか死ぬものだからです。しんみりしたり、愛おしくもなります。

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もちろん、この読み方は、『わたしのいえ』を楽しむ方法のひとつにすぎません。もっと無邪気に「こんな家に住んでみたいなー」とか、「ここに住んだら、どんな生活を送ることになるのかな?」と思いながら読んでも問題ありません。それがノーマルなものでしょうし、想定されている読まれ方だと思います。また実際、気軽にペラペラめくっているだけでも、絵本としての愉しみを十分に堪能できます。見ればわかるように、イラスト自体とても魅力的なものです。

作品情報

『わたしのいえ』(HOME)
作者:カーソン・エリス(Carson Ellis)
翻訳:木坂涼
出版:偕成社
初版:2016年

わたしのいえ

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カーソン・エリスについて

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カーソン・エリス(Carson Ellis)は、カナダ(バンクーバー)出身の絵本作家、イラストレーターです。『わたしのいえ(原題:HOME)』が初の自作絵本となります。二作目の『Home and Du Iz Tak?(未邦訳)』でコールデコット賞オナーを受賞しました。イラストレーターとして携わった絵本としては、デボラ・ホプキンソンの『Stagecoach Sal』、シンシア・ライラントの『The Beautiful Stories of Life』、フローレンス・パリー・ハイドの『Dillweed's Revenge』(いずれも未邦訳)があります。夫はミュージシャンのコリン・メロイ(Colin Meloy。フォークロックバンドのThe Decemberistsを率いる)。オレゴン州在住。