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『ウエズレーの国』ポール・フライシュマン作/ケビン・ホークス画

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あらすじ

ちょっと浮いたところのあるウエズレー少年。そんな彼は、夏休みの自由研究として、壮大なテーマを掲げます。すなわち、「自分だけの文明」をつくりだす──。


インプレッション

踏まれた麦は、根を伸ばす

見るからにナードな主人公のウエズレー君は、アメリカの郊外に住んでいると思われる少年です(作者のポール・フライシュマンはカリフォルニア出身)。周囲から浮いているので、同級生たちによくからかわれます。しかし彼は、周りに合わせるつもりは、毛頭ありません。ピザやコーラは嫌いだし、モヒカン風の髪形がカッコいいとも思えないからです。

そう、すでに彼は自分を持っているのでした。また、本人もそのことを自覚しているため、ちょっかいを出されたところで、表情はケロリとしたもの。思い悩んだ様子は見られません。幼いながらに達観している風です。「どうして同級生はこんなにアホなんだろう。ホント仕方ないなあ」といった具合に。

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さて、そんなウエズレー君に夏休みが訪れます。彼が設定した自由研究のテーマは、何と「独自の文明を作る」(!!!)というものでした。さすが自由の国アメリカ、自由すぎますし、スケールが桁外れです。そこから先の展開は、フィクショナルなものとなりますが(絵本だから当然とはいえ)、ナードならではの妄想力を、もう遺憾なく発揮したものとなっています。

未知の植物をベースとした、食生活、繊維生産、加工品販売を考えたかと思えば、オリジナルの日時計を開発。同時にウェズレー進法(新しい数の数え方!)まで作ってのけます。恐るべし。昼に日時計を作ったのなら、夜空に新しい星座をつくるのも、当然(?)の流れと言えるかもしれません。もちろん作りました。

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他にも彼は、文明の土台となる重要なものを、ゼロから生み出していきます。思考実験的にビッグヒストリーを描いた、稀有な絵本と言えるかもしれません。これ以上のネタバレは控えますが、とにかく言えるのは、「それ作っちゃうの!?」という驚きの連続であることです。この次元まで来れば、もはやナード云々とは関係なしに、「あっぱれ!」と言うよりありません。

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しばしば絵本は、読み手の想像力を羽ばたかせるものですが、『ウエズレーの国』においては、その羽ばたき自体を堪能する作品とも見なせます。そしてまた、主人公ウエズレー君の羽ばたかせ方が、実にいい。ダークサイドな方面に陥らず(そうなっても不思議ではないにもかかわらず)、つねにポジティブな方へと想像力をドライブさせます。それも涼しい顔で。簡単なようでいて、実際にはタフなメンタルと、強い意志がなければ、決してできない芸当です。見た目とは裏腹に、器がデカい! さすが国を作ってしまうだけのことはあります。

作品情報

『ウエズレーの国』(WESLANDIA)
作者:ポール・フライシュマン(Paul Fleischman)
挿画:ケビン・ホークス(Kevin Hawkes)
翻訳:千葉茂樹
出版:あすなろ書房
初版:1999年(日本語版)

ウエズレーの国

ウエズレーの国

  • 作者: ポール・フライシュマン,ケビン・ホークス,Paul Fleischman,Kevin Hauks,千葉茂樹
  • 出版社/メーカー: あすなろ書房
  • 発売日: 1999/07
  • メディア: 大型本
  • 購入: 2人 クリック: 22回
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Weslandia

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ケビン・ホークスについて

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ケビン・ホークス(Kevin Hauks。1959~)は、アメリカ合衆国テキサス州シャーマン出身のイラストレーター、絵本作家です。ユタ州立大学卒。趣味は、自転車、サッカー、読書、ガーデニングです。これまで30冊以上の絵本にイラストを提供しています。日本語で読めるものとしては、『ぼくはだれもいない世界の果てで(原題:Me, All Alone, at the End of the World)』、『大森林の少年(原題:Marven of the Great North Woods)』、『としょかんライオン(原題:Library Lion)』などがあります。ポール・フライシュマンと組んだ作品としては、他に『Sidewalk Circus(未邦訳)』があります。